【九州集団療法研究会第32回/2006年開催】自助グループと関係する中で見えてきた役割と課題

発表者: 医療法人志仁会 西脇病院 海老原 勇二(精神保健福祉士)

当院がアルコール依存症をはじめとする嗜癖問題行動に長年携わってきた中で、アディクション臨床を行うためには、専門外来の整備・充実とその回復にとって自助グループ(以下「SHG」と略)の存在は欠かせないものでした。しかし、当院の治療プログラムとSHGとの役割を明確に区別することを臨床活動の必要条件としました。つまり医療側とSHGの一体化や自助Gのプロ化、そして医療側による自助Gの私物化を避けるためです。

昭和51年に始めた集団療法「夜間集会 (アディクションの問題を抱える方、またはその家族、その他関心のある方々等のオープンMt)」を軸に、他疾患の患者の要請に応える形で様々なグループワークが誕生しました。院長をはじめとするスタッフが様々な自助Gに接近し、その回復のイメージ(治療効果)を実感できたことで、地域のSHGの拡大・成長にリンクするように治療プログラムも発展を遂げてきました。

「ふれあい会(うつ病SHG)」の発足(H18.7月)にあたり、発起人(当院Pt)の要望を聞いて欲しいというDr.の考えと、SHGの立上げには関与しないという病棟側の姿勢の狭間で、私自身当初は迷いがありました。その時、院長から「グループ(以下「G」と略す)の活動自体には一切介入しないが、その運営には介入できる」という、当院の姿勢の提案が、 どこか保証されたような、また何かヒントのような印象を受け、立上げに継続して関わることとしながらも、常に葛藤が付きまといました。

SHGの形式として1取り込みタイプ(専門家が直接介入)2自律的タイプ(専門職から独立して運営)3側面的援助タイプ(専門職が間接的な関わり)が言われる中、この「ふれあい会」 はどのタイプとなるのか? SHGでありながら、当院の施設提供を名目にスタッフの介入。病院側がGを取り込んで医療側中心のGになる危険性を感じる一方で、クローズ Mtのために活動への介入は許されないし、介入もしない。また、立ち上がった経緯から完全自律したGでもない。側面的援助と言いながらも、結果としてGの病院・専門職への依存・退行を助長し自立を阻害することにはならないのか? また、「プロ化・私物化」を避ける為、 治療プログラムとSHGの役割の明確化を謳いながら「フィルター的な役割(G運営に介入する)」がG組織を操作することになり、間接的な 「取り込み」とは言えないのだろうか?等々、多くの疑問を抱えていました。そこで、発足時には専門職も介入し、メンバーの意向を汲み取りながらその成長を見守っていくような「育成タイプ」を今後のSHGの新たな形式として考えました。最初からGの完全な自律を求めるのではなく、Gの要望に応じられる範囲で関わりを保ち、その後の自立を促していく。「既製服」ではなく「オーダーメイド」というあり方が、今後ニーズとして増えていくことと予想されます。医療側とSHGの関係において「プロ化・私物化」と「取り込み・側面的援助」を混同することなく、その危険性は常に紙一重であることを意識しながら関わることが重要であると考えられます。また、 SHGが発展・成長する経過として「育成」という側面的援助で関わり、後に「自律」できることが望ましいのではないでしょうか。そのGが「育成段階」なのか「自立できる段階」 なのか、そのタイミングの見極めも我々の役割だと考えます。

以上のような発表内容でコメンテーター司会の先生方をはじめ、フロアの方々からも、私の不安や疑問を汲み取って頂きながら、活発な意見・質問を賜りました。私自身の返答が十分に満足できるものとは言えず申し訳なく思っております。

しかし、この発表を通して当院の治療プログラムとSHGのあり方や関係を再度見つめ直し、私自身が関わってきたことの棚卸しの作業ができる良い機会となり、大きな収穫であり財産となると思います。 有難うございました。

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【九州集団療法研究会第32回/2006年開催】自助グループと関係する中で見えてきた役割と課題

発表者: 医療法人志仁会 西脇病院 海老原 勇二(精神保健福祉士)

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