発表者: 医療法人志仁会 西脇病院 宮崎 けい(PSW)
西脇病院は218床の精神科単科の病院です。当院の入院患者の多くはアディクション(嗜癖)関連が多く、当院では依存症の治療としてアディクションリハビリテーションプログラム(以下ARP)があります。ARPの原点は、当院で最も古い『夜間集会(入院患者を囲み外来OB・自助グループメンバー・家族・医療スタッフが一同に集い体験談を語り合い、集団の中で自己洞察することを目的とする集団療法)』です。この夜間集会は40年以上の歴史があり、ここから、当院の治療プログラムは拡大していきました。
このARPの一つに『女性の集い』はあります。『女性の集い』の発足は平成8年です。それまで、女性の依存症者の体験談を話す場所は、断酒会・AA・夜間集会でした。いずれも男女混合で、男性参加者が多くを占めており、女性たちは肩身の狭い思いをしてきました。
そのため、治療や自助グループに繋がりたくても繋がれない、せっかく繋がっても思ったことが話せずに継続できない女性たちが多くいました。「女性の話す場所が欲しい」そういった女性たちの声から、当院では平成8年に『女性の・女性による・女性のためのミーティングとして『女性の集い』が始まりました。発足当初はアルコール依存症の当事者が中心でした。
私が『女性の集い』に携わるようになったのは、平成27年。間もなく、『女性の集い』発足から20年になる年でした。引き継いだ当初、ミーティングのテーマはアルコールに関すること(飲んだきっかけ、酒での失敗談)にしていましたが、話が弾まない、アルコール以外の依存症者もいることから、テーマを人間関係の悩みやストレス等にするようになりました。すると、次第に女性の悩みが表面化し、依存症の当事者だけでなく“共依存”の問題を抱える妻や母親の参加者も増えてきました。
参加者の声を聞く中で、
- “良妻賢母”の女性像にとらわれている。
- 「自分のコト」より「人のコト」をしてしまう“共依存”の問題。
- 「普通」を目指しているのに「完壁」を求めている。
が浮かび上がってきました。そして、問題なのは「依存の問題」ではなく「生き方の問題」であると気づきました。
参加者も体験談を話すこと・聞くことで自ずと「夫が~」「家族が~」と話していたのが、「私が~」と自分のコトに焦点を当てられるようになり、次第に、自分のために『女性の集い』に通うようになり、「求められた生き方(良妻賢母)」から「本当はどう生きたいか」について考えるようになりました。その変化を私自身も間近で見ること・感じることが出来ています。
発表では、事例も交え、女性たちの生きづらさ、女性の話す場所の大切さ、話すことによってどう変わっていくのかを話させて頂きました。
今回、九州集団療法研究会で、『女性の集い』について話すと決まった時に、「(女性の問題は)男性の陰に隠れてきたのだから、タイトルくらいは目立つものにしよう!!」と思い、攻めの姿勢のタイトルにしました。それが功を成したのか、当日は多くの方々にご参加、ご質問・ご感想を頂きました。一方的に発表者が話すのではなく、フロアの方々とやり取りをする形の分科会だったので、まるでミーティングのような雰囲気で話すことが出来ました。
また、発表後にも「ミーティングの大事さが分かった」「アディクションの集団療法に興味を持った」等と声をかけて頂き、ミーティングの大切さを実感することが出来ました。実は発表前の『女性の集い』で参加者から「女性の話す場所は大事でもっと必要って伝えてくださいね」とエールを送られていたので、その声をフロアに届けられたのではないかと思います。
最後になりますが、司会の坂本様、コメンテーターの丸岡先生、フロアの方々、そして関係者の方々に感謝申し上げます。