【九州集団療法研究会第42回/2016年開催】新たな作業療法士が加わり奮闘する精神科リハビリテーション

発表者: 医療法人志仁会 西脇病院 松尾 隆太(OTR)

当院は、機能分化された4病棟の特徴的な病棟運営に加え、アディクションリハビリテーションプログラム(以下、ARP)、うつ病リハビリテーションプログラム(以下、DRP)、復職支援プログラム(以下、RBP)という特徴的なプログラムを有し、理念の“LIFE”のもと、病気からの回復はもとより、患者さんの「より良い生活・人生」を願って就職まで支援を行っている病院である。そのような病院に、療養的な入院処遇を主に行っている精神科病院から私は再就職し、1年6ヶ月が経過する。

私の入職を皮切りに、作業療法士(以下、OTR)が大幅に増員される。そうした状況の中、院長は「OTの立て直し」、「精神科リハビリテーションの整備・改革」を指示し、以前と違うシステム等とのギャップの中、不安とプレッシャーを感じながらも、まずはOTの基盤つくりに奔走した。

そして、「精神科リハビリテーションの整備・改革」として、これから何が必要なのか?を様々なデータや症例から紐解く。すると、「疾病構造は変化し、うつ病やアディクション、ストレス関連疾患の増加」、「100人に1人となっている統合失調症は、人口減少や少子化により減少する」などが分かり、今まさに精神医療は転換を迎えていることが見えてくる。そのような状況の中、精神科リハビリテーションチームのチャレンジとして、

  • 「アディクション、うつ病はもちろん統合失調症患者への治療・援助に加え、復職・就職支援という入院から地域まで見据えた幅広い支援」
  • 「重度かつ慢性患者に対する機能維持的取り組み」

を提案させてもらった。
①はARP、DRP、RBPのニーズの高まりはもちろん、以前の治療・生活様式から変わる中で、新たな「統合失調症プログラム」の必要性を感じ、「回復期の統合失調症リハビリテーションプログラム(以下、SRP)」を提案する。また、活動を企画する際には、生物学的・社会的アプローチはそれなりに充足している中、心理的アプローチへの取り組みを模索せねばならなかった。そこで行き着いたのが当院の治療の核にある“集団療法=ミーティング(ピアレビュー)”と“ピアサポート”である。それは、自らの病を受け入れ(否認の問題)、患者が抱える生きづらさを解消し、各々患者がその人らしい人生を送るための基盤を作ることだ。それを、これまで行ってきたARP、DRP、RBPをモデルに統合失調症の回復プログラムにも応用してみることにした。一方、②への課題も忘れてはならない。これまで様々なアプローチを行うも、重度かつ慢性の経過をとる患者への、その人らしい生活・人生を最後まで支える・見守る取り組みから我々OTRは目をそらしてはならない。

このような課題に対して、OTRとしてはその専門性を活かし「活動全体をコーディネートすること」、「その中での変化などを評価すること」が求められる。まだまだ、当院のOTは未成熟で不安と模索の日々にある。しかし、このような発表の機会をもらい、振り返り、そして上記を提案させてもらう中で、少しずつ取り組むべきことが見えてきた気がする。

最後に、コメンテーターの義村先生からは、様々な精神疾患の裏に隠れている「否認の問題」を鋭く示唆され、そこに集団療法の有用性を説き、そしてその源流にある「夜間集会」を大きく称賛していただいたことは大きな自信となった。司会の高田先生は、居場所的なデイケアの問題、新規患者さんがデイケアに移行しにくい現状を話され、私も含めた分科会内全員が、同様の状況にあることを感じているようで、これからの精神医療を考える良い機会を与えてもらった。フロアの皆様からも活発な質問や意見を頂き、今後、実践していくにあたり、良い刺激をもらえたように思う。

司会、コメンテーター、フロアの皆様、本当にありがとうございました。

これからも、社会情勢の変化とともに精神医療に求められるニーズも変容していくはずだ。今後起こる様々な事象を単一の問題で見るのではなく、全体像や裏、つながりを見て、時代のニーズに沿った支援・援助が提供できるような精神科リハビリテーションチーム、OTチームでありたいと思う。

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【九州集団療法研究会第42回/2016年開催】新たな作業療法士が加わり奮闘する精神科リハビリテーション

発表者: 医療法人志仁会 西脇病院 松尾 隆太(OTR)

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