発表者: 医療法人志仁会 西脇病院 辻田 悠司(PSW)
西脇病院は長崎県西部に位置する229床の精神科単科病院である。昭和32年の開院当初より増床と減床という病棟構造が変化する中で、治療体制も大きく変化を遂げてきました。
それに伴い、夜間集会(入院患者を囲み外来OB・自助グループメンバー家族・医療スタッフが一同に集い体験談を語り合い、集団の中で自己洞察することを目的とする集団療法)を原点としたARP(アディクション・リハビリテーション・プログラム)や他の治療プログラムも拡充してきました。
「混在化から脱却するための機能分化」、つまり統合失調症中心の入院施設からの脱却を図り、現在増加傾向にある「うつ病・ストレス関連疾患」に対する医療サービスの提供があげられ、夜間集会を原点としたARPに加えて、地域の自助グループの活性化が進みました。精神科病院は地域の他の社会資源と連携を保ち、且つ病院も地域の社会資源のひとつとして機能を発揮することが必要であると考え、当院では地域の自助グループへ対して「場の提供」として施設の開放・提供を行うように連携を図ってきました。
そして今回、前述した夜間集会を原点として拡充してきたARPの一環である、「初心者ミーティング(演者担当)」への関わりについて発表させていただきました。
私のアディクション対象者への関わりは、PSW業務として受診相談からインテーク、家族相談や訪問看護等、個別的なケースへの関わりはあったものの、集団(グループ)を担当することは初めてのことでした。担当開始当初はミーティングの中で、できるだけ話してもらおうと、本や新聞等からミーティングのテーマを必死に探す等、会の進行ばかりにとらわれていました。発言者の「パス」が続き、時間を有効につかえずに私自身が時間を埋めるように話してしまった経験もあります。参加メンバーは何を考えているんだろうと不安や疑問の様々な葛藤の中、他のミーティングではどのような運営(進行)が行われているのかとGA長崎グループに参加して他のメンバーの体験談を聞くことで、悩みの解決のヒントを得たり問題との付き合い方を学ぶことができました。実際の体験に基づいた解決方法について考え、悩んでいるのは自分だけではないという安心感。自身の体験談が相互の力になることを知って、失った自信を取り戻すというような感覚を実感し、自身の体験を語ることは過去を振り返り気持ちを整理できるのだと、自助グループでの学びとしての私の体験談についての話をさせていただきました。
発表に際し、コメンテーターの高田さんから「様々な葛藤を持ちながら集団へ関わる発表者にエールを送りましょう」とご提案いただき、分科会に参加いただいた方々から“集団との関わり”を基とした体験談や助言をいただきました。 集団の対象は高齢者や統合失調症等、様々であり、職種もNs・OTR・CP・PSWと多職種の方々の助言は、共感できることや自身では考えたことがない集団への関わり方を聞かせていただきました。まさに体験談から得る「知恵」の部分であると実感し、非常に貴重な集団の経験をさせていただいたと思います。
今回の発表を通して、初心者ミーティングの役割をあらためて考える機会となりました。 活動の目的は「耳」と「口」のトレーニングと掲げていますが、ミーティングには自分の足でミーティング会場に出かけていき、語る人の表情や聞いている人が笑ったり泣いたりする様子、自分を迎えてくれるその雰囲気を感じることが大切であると思いました。つまり、「耳」と「口」に加えて、“社会性”のトレーニングの場としての役割があると思います。 発表を通して、日頃の関わりを大切にしながら、メンバーが導き出す「ピアサポート」の力を信じていくことの大切さをあらためて確認しました。今後のミーティング進行(運営)にあたり、現時点の私自身に出来る事はサブタイトルにも挙げているように“聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥”に習い「分からなければ足を運ぶ」それを継続することであると考えました。足を運ぶ中でどのような可能性があるのかを自身で体験しながら学びを深めていきたいと思います。私自身もまた、“足”のトレーニング中なのだと、初心にかえることも体験させていただいた発表となりました。